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甲信越・北陸
ルポ

移住と創業を成功へと導く“四重奏” (石川県七尾市)

取材が決まった当初、能登半島と聞いて「東京からどれだけかかるのだろうか」と少し不安交じりだった。しかし北陸新幹線が金沢まで開通したおかげで、金沢まで約2時間半、そこからローカル線に乗り継いで約1時間、東京を出発してわずか3時間半後には能登半島中央部に位置する石川県七尾市に到着した。

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「都会的な便利さ」と「ゆったりした自然」を兼ね備えたまち

「天然の生け簀」―――日本海の寒流と暖流がちょうどぶつかりあうことから、数多くの魚が集まる全国有数の好漁場として知られる能登半島。そんな能登半島の中央部に位置する七尾市の海の玄関口・七尾港では、約800種の魚介類が水揚げされると言われ、また2011年には能登地域の里山里海が「世界農業遺産」に認定されるなど、七尾市は海山それぞれの恩恵に恵まれ、古くから能登の中心地として発展を続けてきた。

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また自然はもちろんのこと、日常生活においても商店や病院などが市中心部に集約され、コミュニティバスや路線バスも市内各所に張り巡らされるなど“コンパクトシティ”として整備されていることから、「都会的な便利さ」と「ゆったりした自然」を兼ね備えたまちとして、近年移住先として注目を集めている。

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JR七尾駅前

 

<田舎暮らしの本「2016年住みたい田舎ベストランキング」>
チャレンジしたい若者にぴったりな田舎部門 第1位
総合ランキング 第26位
エリア別ランキング・北陸エリア 第2位

<週刊東洋経済「住みよさランキング2015」>
安心度 第5位
住居水準充実度 第23位

総合ランキング 第25位

 

元々東京で生まれ育ったが、アメリカ人女性との結婚をきっかけに20年以上にわたって米国暮らしをしていた矢原稔さんは、奥さんと死別し、息子さんが高校を卒業したタイミングで2015年に帰国した。そのときアメリカでは田舎町に長く住んでいたことから、東京ではなく地方で暮らそうと考えて日本各地を回った。そして縁あって初めて七尾市に訪れた時、都会過ぎず、田舎過ぎず、そのバランスに惹かれて即決し、訪問からわずか10日後には七尾市に移り住んできた。

また福島県から移住してきた“ほんだゆきこ”さんは、元々はWEB会社に勤務していたが、被災をきっかけに「生きる」ことを強く意識するようになり、企業勤めで生計を稼ぐのではなく、自然のなかで生きる術を身につけたいと考えるに至った。そんなとき地域おこし協力隊として赴任していた姉夫婦を訪ねて七尾市の能登島に来た時に「ここだ!」と直感し、2013年春に移住。現在は地元のデザイン会社やレストランでアルバイトをしつつ、フリーのイラストレーターとしても活動している。

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「海の色が優しかったことにひとめぼれした」と独特の言葉で語るほんだゆきこさん

ほんださんは七尾市に移住してきて良かったこととして、自然豊かな景色に囲まれているのはもちろん、地元の人と山菜を採りに行ったりおすそ分けしてもらったりなど、顔が見える食材で食事が出来ることを挙げる。また自身でも野菜作りを移住直後から始めたが「去年は上手くいったのに、同じようにやっているはずなのに今年は上手くいかないなんてこともザラにある」そうで、野菜作りの奥深さを改めて実感しているそうだ。

 

四重奏で移住と創業を全面支援

 

このように移住先として注目を集める七尾市だが、さらに最近では七尾市の豊かな地域資源を活用して、新たに商売を始めようという人たちが少しずつ増えてきているという。

七尾市で生まれ育った廣瀬智博さんは、高校卒業後は東京の大学に進学し、その後金沢や東京の飲食店で働いていたが、2014年にUターンして、七尾駅前で半世紀にわたって親しまれてきた実家のおでん屋を、串あげをメインとした立ち飲み形式の店として生まれ変わらせた。

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Uターンして七尾初の串あげ屋を開業した廣瀬智博さん

また前述の矢原さんも、現在は市内の観光地・和倉温泉の寿司屋で働いているが、将来はシェアハウスを運営したいと考えていたところ、先日地元の豪家の屋敷跡を借りられることになった。

「とりあえずこの家を手直ししながら、何が出来るか、何をやろうか考えている最中ですが、海外生活の経験を活かして、外国人向けのシェアハウスとか出来たら良いですね。」

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そして七尾市での創業の気運を高めようと奮闘しているのが「ななお創業応援カルテット」だ。

元々七尾市での創業支援は、七尾市役所をはじめ商工会議所や金融機関等がそれぞれ独自に行っていたが、各機関の単発的な支援に終始し、創業したいという人から見ると不十分に終わってしまっていたケースも多々あった。そこで各機関が連携することで、創業前支援から創業後フォローまで一気通貫で支援すべく、七尾市役所(産業部)・七尾商工会議所・日本政策金融公庫・のと共栄信用金庫の官民4者による「ななお創業応援カルテット」が2014年1月に発足。これにより創業を思い立ったら、創業時に必要な知識の習得や事業計画の策定、融資や補助金などの資金調達、物件探しや専門家紹介に至るまでワンストップで相談できるようになり、その結果発足からわずか1年半で28件の創業を実現、またその成功は他の自治体やメディアからも注目されるまでに至った。

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カルテットでは組織の壁を超えて毎月集まり、移住・創業支援に向けて情報交換や協議をおこなっている。
(左から七尾商工会議所 山田氏・芝垣氏、のと共栄信用金庫 小石氏、七尾市役所 立川氏、日本政策金融公庫 相良氏)

また発足時は七尾市民の創業を想定していたが、実際蓋を開けてみると七尾市で創業したいという移住者からの相談もあったと言う。例えばカルテットのIターン創業第1号としてリラクゼーションサロンをオープンした熊谷隆弘さんは、長年神奈川県藤沢市で整体師・スポーツトレーナーとして活動していたが、どこか新しい土地で独立しようと思って移住先を探していた時、七尾市のコンパクトなサイズ感と創業支援制度の充実さに惹かれて、最終的に七尾市に移住してリラクゼーションサロンを開業した。

しかし移住者の窓口は、当時まだカルテットに属していなかった七尾市役所の総務部が担当しており、創業したいUIターン者は創業相談と移住相談を別々にしなければならず、その煩雑さから別の地域を選ぶ移住希望者もいたという。

そこで創業したい移住者に対して「創業」と「移住」をワンストップで支援すべく、2015年6月に七尾市役所の移住相談部門である総務部もカルテットに加わり「iju(いじゅう)創業パック」として窓口を一本化することに。その結果県外からの移住者の相談は「iju創業パック」が出来る以前は、カルテット結成から1年半で5件だったのに対して、以降は9か月で既に6件に上る。

 

とは言え「創業したい」という人は日本全国に多数いるが、七尾市に縁も所縁もない人が「七尾市で創業しよう」と思う理由は何なのだろうか?

「“都会と田舎の両方の側面を持ち合わせていて住みやすい”“食に恵まれている”“子育て環境として適している”など、まずは住む場所として七尾市に魅力を感じていらっしゃることが挙げられます。」(のと共栄信用金庫・小石芳一氏)

「そのうえで創業面に目を向けても、他の自治体の補助金は使途が厳しく設定されていることが多いですが、七尾市は対象範囲を広くして利用しやすいようにしているのも大きいようです。」(七尾市産業部・立川淳氏)

このように移住先としての地域の魅力と、創業面での支援体制が相まってUIターン者の創業が増えつつある七尾市だが、とはいえ「創業」ということだけであれば都会でもさまざまな支援制度が充実している。

そうしたなかで、都会ではどうしてもビジネスライクに審査されたり、数をさばくために事務的な処理に陥りがちだったりするが、こちらでは相談者一人ひとりに親身になって二人三脚で取り組んでもらえることも大きいだろう。また特に地方では何をするにしても“人のつながり”が不可欠になってくるが、地域密着の体制なので必要な人脈をつないでもらえることも可能だ。いくらハード面での「体制」が万全でも、それを運営する「担当者」が本気でなければ絵に描いた餅で終わってしまうが、カルテットの一番の強みはカルテットメンバー一人ひとりが「案件」としてではなく「一人の人間の夢」として真剣に向き合ってくれるところにあるのかもしれない。

 

一方で従来の実績は飲食やサービスなど“店舗”が中心だが、たとえば七尾市の豊かな自然の恵みを活用した六次産業化や販路開拓など、ITやクリエイティブ関連で起業したいというような人たちについてはどう考えているのだろうか。

「確かに元々は店舗を増やそうということでカルテットをスタートしましたが、ITやクリエイティブ関連で既に活動されていたり、そういう活動をしたいと考えたりしている方も市内にはいらっしゃるので、その人たちとつながり、意見交換させていただきながら、どういう支援が望ましいか検討していく予定です。」(のと共栄信用公庫・小石芳一氏)

「いきなり大きなビジネスをしようというのは難しいですが、まずは手に職がある方が七尾市で生計をたてるための“生業”をつくる、そのお手伝いが出来ればと思います。」(七尾商工会議所・山田一男氏)

「人口減少は続いていくかと思いますが、地域の活気まで衰退させてはなりません。そのためにも『よそ者・若者・バカ者』の視点やスキルを積極的に地域に採りこんでいければと考えています。」(七尾商工会議所・芝垣圭太氏)

と今後は支援対象の間口を広げていくとのことだ。

 

――――――

 

地元の人がいくら「良い土地だから来てほしい」と言っても、移住者にとっては縁も所縁もない土地にいきなり惚れこむことはない。まずは暮らしながら、地域を好きになっていき、好きになったら、その土地のために役立ちたいという熱い想いが芽生えたり、他の人にも薦めたりする、それが自然な流れだろう。カルテットのメンバーたちも口々に「七尾市を好きと言ってくれる人、七尾市でやりがいを見いだせる人を一人でも増やす、そのための取り組みである」と語り、日本政策金融公庫の相良和孝氏は「カルテットによって七尾市の創業を盛り上げていくことで、それが呼び水になってまた新しい人が訪れる。そんな循環を生み出しながら、将来的に創業者・起業家が集まる『カルテット村』が出来れば最高ですね。」と夢を抱く。

「地方で創業したい」と考えている人は、まずは気軽に七尾市を訪れて、カルテットにあなたの夢を語ってみてはいかがだろうか。きっとあなたの夢を成功に導くための“四重奏”を奏でてくれるに違いない。

 

七尾暮らし応援サイト「ななおで暮らす」 https://www.city.nanao.lg.jp/nanaokurashi/index.html

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廣瀬智博さん(石川県七尾市出身)、絵美さん(東京都葛飾区出身)


子どもの頃の思い出を聞かせてください。

(智博さん)当時実家は七尾駅から山のほうに10分くらいのところにあり、祖父の家は海辺にあり、そして駅周辺部には同級生が多く住んでいたので、子どもの頃は市内で遊び場に困ることはなかったですね。また第2次ベビーブーム世代で同級生も多かったので、日替わりでいろんな友達といろんな場所で遊んでいました。そんな同級生も多くは市外に出てしまいましたが、最近は少しずつ戻り始めています。

 

智博さんも一度は県外に出て、戻ってこられたお一人ですね。

(智博さん)いつか経営者になりたいという想いを胸に東京の大学に進学し、在学時からフリーランスとしてバイク便をやったり、友達と雑貨屋を運営したりしていました。卒業後もしばらくはそれら活動を続けていたのですが、父が他界したことをきっかけに、実家のおでん屋を継ぐことを決心しました。

ただすぐに帰って継ぐのではなく、他の地域でいろいろと経験を積んだうえで、その経験を活かして七尾に今までなかったようなお店を開きたいと考えました。そこでまずは調理師学校に通って、その後もしばらくは金沢の料亭や東京の飲食店で修業したうえで、満を持して2014年に戻ってきました。

 

そうして2014年に開業されたわけですが、七尾市の「ななお創業応援カルテット」も利用されたのですか?

(智博さん)元々母親がやっていたお店が入っていた長屋は老朽化していて、衛生面に不安があったので、改修のための資金が必要でした。その時に商工会議所に勤めている同級生からカルテットの話を聞き、特に補助金申請ではいろいろとお世話になりました。また創業後もいろいろ気にかけていただき、カルテットとしてはもちろん、一人の人間として“応援”していただけているという印象ですね。

(絵美さん)私はお店の経理関係を担当しているのですが、それまで経理の経験がなかったので、カルテットからセミナー情報などをいろいろと提供してもらって、すごく助かりました。

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奥さまは旦那さまがUターンすると言ったとき、どんな思いでしたか?

(絵美さん)私は東京出身で祖父母も近くに住んでいたので、小さい頃は自然豊かな田舎に憧れていました。とはいえ結婚後も大半は東京で過ごしてきたので、主人がUターンすると言った時、はじめは正直実感がわきませんでした。ただ以前から主人は「いつかUターンしたい」と言っていたので、流れに身を任せようと思いました。

 

実際に七尾市に移ってきていかがですか?

(絵美さん)都会は良くも悪くもさまざまな音に囲まれていますが、こちらは本当に静かで、最初の頃は不安を覚えるほどでした。ただ子どもたちにとっては鳥のさえずりや蛙の鳴き声といったものが新鮮のようで喜んでいますし、主人は主人で都会の喧騒から逃れて、やっと静かな土地に戻ってこれたという想いのようです(笑)。

また能登半島は、冬場は曇りがちですが、だからこそ春を待ち望んだり、夏は短いので思い切り満喫したり、秋は山菜など美味しいものを味わったりなど、四季の移ろいを強く意識するようになりましたね。

 

お子さまは七尾市での生活になじまれていますか?

(絵美さん)小学生の長男は環境が東京と一変したこともあり、やはり最初のうちはとまどうことも多かったようですが、最近はすっかりこちらの生活になじんでいます。東京では同級生の人数も多いので、同い年同士で遊ぶことが多かったですが、こちらは人数が少ないので、下級生から上級生まで年齢や性別に関係なくお友達が出来、どこに行っても誰かしら知っている顔がいる安心感だったり、良い社会勉強につながったりしていますね。また東京だとなかなか隣近所とのお付き合いがなかったのですが、子どもを通じて家族ぐるみでお付き合いできるのもこちらならではですね。

(智博さん)夏には市内の能登島の海水浴場に連れて行ったり、近所にカブトムシを採りに行ったりしています。仕事が忙しくてまだ約束を果たせていないですが、釣り好きの友達が出来たとのことで、近いうちに釣りにも連れて行ってあげたいなと思っています。

 

では最後に地方移住や地方での起業を考えている人に一言お願いいたします。

(絵美さん)私の場合は自分の意志ではなく、主人に身を委ねて不安交じりで七尾市に移ってきたわけですが、実際に来てみないと分からなかったことも多いので、移住に興味があるならば、まずは飛び込んでみるのもありだと思います。最近七尾市は移住先としても注目を集めているので、是非仲間が増えることを期待しています!

(智博さん)起業っていろいろと不安やリスクも多いと思いますが、七尾市にはカルテットという存在がありますし、都会と比べて無いものばかりなので、逆に新しいことを始めるのに適した環境だと思います。地方で起業を考えている人は、起業してビジネス力を身につける場所として七尾市を検討されるのも良いと思います。

 

移住者や起業家が七尾市に集まり、そして「灘」が集いの場になると良いですね!有難うございました。

 

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市中心部は、都市機能が充実していて、買い物や病院が徒歩圏内にあるほか、乗車料金100円の循環バスが走るなど利便性が高い。一方中心部を離れると、「世界農業遺産」に認定された、美しく豊かな能登の里山里海の自然が広がり、季節ごとの新鮮な「海の幸」や「山の幸」が楽しめる。

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<自然環境>
「世界農業遺産」にも認定された七尾市を含む能登地域は、里山里海に囲まれ、自然の恵みを受けた新鮮な海の幸や山の幸、里の幸が市内で普通に流通しているほか、旬の魚を釣ったり、山菜を採ったりすることも日常的に楽しめる環境である。

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また四季がはっきりとしていながらも、北陸の中では夏はやや涼しく、また海に面しているため冬も比較的雪が少ないなど過ごしやすい気候で、台風や大雨などで大きな被害を受けることも少ない。

<生活環境>

市内にはコンビニエンスストア、商店街、スーパーマーケット、ホームセンター、ドラッグストア、家電量販店などが多数あり、日常生活に必要なものはほとんど市内で揃う。

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また市内には2つの総合病院があり、うち1カ所は能登地区唯一の「救急救命センター」として24時間365日救急搬送を受け入れ、高度な医療が必要な患者への迅速な対応も可能なほか、約70カ所の医療施設があり、休日も当番医が対応している。

子育て面においても、「延長保育」「休日保育」「病児保育」などの支援サービスが充実しており、保育園の待機児童はゼロである。また中学校3年生までの子どもには、医療費助成制度があるほか、妊娠中の子を含めて3人以上の子ども(満18歳未満)がいる家族は、「プレミアム・パスポート」を協賛企業の店舗で提示すると、割引などの特典が受けられるなどの制度が導入されている。

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石川県七尾市

  • 夏が涼しい
  • 海がある
  • 山がある
  • アウトドアスポーツが楽しめる
  • 温泉を楽しめる
  • 買い物の利便性が高い
  • 交流・体験・お試し制度がある
  • 農林水産業従事への支援がある
  • 育児支援がある
  • 住宅支援がある
  • 起業支援がある
  • 就職・転職支援がある
  • 生活支援がある
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移住と創業を成功へと導く“四重奏” (石川県七尾市)

口コミ

1件
創業支援が魅力的だが・・・

生きるためには仕事をする必要があるが、移住する際の仕事の選択肢として、起業も一つ視野に入れている。創業する人を支援する体制があることに魅力を感じる。ただ、自治体のページ等のインタビューを読むと、移住者が初期によそ者扱いされているような表現もある。都会でしか暮らしたことの無い者には想像がつかない生活環境であり、このようなことを聞く度に、田舎暮らしには憧れるが、やはりある程度の大きさの地方都市の方が暮らし易いか・・・と思ってしまうのも事実。

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