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ハヤブサが運んできた未来の種(鳥取県八頭町)

鳥取県の県庁所在地・鳥取市。その中心部に位置する鳥取駅周辺は高いビルや商店でにぎわう市街地でありながら、鳥取駅を出発することわずか15分、今回の目的地である八頭町に列車が着く頃には、すっかり景色は山間地域のそれへと変わっていた。

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八頭町(郡家駅)~若桜町(若桜駅)をつなぐ若桜鉄道

そんな山間の町のニュースを目にすることが最近増えている。

廃校となる小学校などの空き施設を活用し、IT企業のサテライトオフィス開設やイノベーター人材の誘致や育成を行うことで、新しいサービスの企画やドローンの研究開発、またそれらに携わる人材育成を行う実証拠点づくりだったり、若者が農業や林業とITの仕事を兼業できるような働き方の提案だったりなど、過疎地の課題と先進技術、そして人材との掛け算を起こす「八頭イノベーション・バレー」の創設が進められている。

そしてその一環として、2016年5月には民間企業と組んで、八頭町で自動運転の実証実験が行われることが発表された。今後有人自動運転での試験走行などを経て、2019~2020年には町営バス路線などでの無人自動運転サービス開始を目標としている。

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2009年度から運行している町営バス「さんさんバス」。ドライバーの高齢化や運行経費の削減など、過疎地ならではの交通問題に対応するため、2020年に向けてバスの自動運転化を目指すという。

しかし八頭町も全国各地と同様に、高齢化や人口減少など過疎化が進んでおり、以前は「このままではいけない。でも何をすれば良いか分からない。」と頭を抱えるだけの状態だったという。

そんな八頭町が「もしかしたら変われるのではないか」、そんな風に前向きに変わった転機は、2008年夏だったのかもしれない。

 

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隼駅 - 木造平屋建て本屋の北側にプラットホームが連続するノスタルジックな駅舎は、訪れた人々を温かく迎えてくれる。

隼駅は、1930年までこの一帯を運行していた国鉄若桜線(現・若桜鉄道)の終着駅(その後延線)だったことから、本屋や乗務員休憩所など、他の沿線駅にはない施設が設けられているほか、2008年には沿線全体が国の登録有形文化財に登録された。

 

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時を同じくして2008年の夏、バイク専門誌「月刊ミスターバイク」が「8月8日はハヤブサの日」と銘打ち、スズキの大型バイク“スズキ・GSX1300Rハヤブサ”のオーナーに「隼駅に集まろう」と呼びかけたのをきっかけに、隼駅はハヤブサ乗りの聖地となり、以来一目隼駅を見ようと1年を通じてライダーが訪れるほか、毎年8月第1日曜日に開催されるイベントには、千数百人ものライダーが一堂に集結するほどになった。

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隼地区の住民からしてみたら、生まれた時から当たり前の地名だったかもしれない。しかしちょっと角度を変えただけで、新たな価値が生まれたのだった。

 

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そんな隼駅の盛り上がりが地元出身者の若者の心に火をつけた。少子化で自分が学んだ学び舎が廃校になることを聞き、「何か地元のために出来ないだろうか」、そんな想いでUターンしてきた同級生が集まり、地域活性団体「トリクミ(2015年に株式会社化)」を立ち上げた。トリクミでは、地元の農家や商品を作っている人たちと組み、マルシェを開催したり、地域のおみやげも一緒に作ったりしている。

また地域住民から「この地域を元気にするために何かできないだろうか?」と声をかけられたのをきっかけに、隼駅前の空き物件を改装したカフェ&コミュニティースペース「HOME8823(8823=はやぶさ)」を2014年にオープン。近隣住民の憩いの場となるとともに、隼駅に訪れたライダーが立ち寄ることも多い。

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さらに2016年春には、ライダー向けのゲストハウスとして「BASE8823」をオープンさせた。せっかく多くのライダーが訪れるようになっても、それまで八頭町には泊まるところがほとんどなかった。しかしせっかく訪れてくれたのだから、もっと町に留まってもらって、地域の人たちと交流するなど、この町を好きになってもらいたい。そんな想いでオープンした「BASE8823」は、コンテナを改造したバイク専用ガレージを併設し、愛車を雨風からしのぎ、ライダー同士でメンテナンス、洗車等ができるスペースを設置するほか、部屋も徹底的にライダーが過ごしやすい工夫を施している。

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一方Uターン者だけでなく、Iターン者の間でも動きが出てきている。岡山県出身で、香川や兵庫、京都で過ごした後、地域おこし協力隊として八頭町に着任した足立智さんは、2016年7月に「渓流民宿とんぼ屋」を開業した。

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渓流釣りが趣味でよく岡山県の北部に出向いていたが、山を挟んで反対側に位置する鳥取県は、もっと渓流釣りに向いているなど、鳥取についてよく話を聞いていた。そして幼馴染みが八頭町で地域おこし協力隊をしていたことをきっかけに、自らも八頭町に行こうと決意したという。

「県外から多くの釣り人が来るくらいのところですが、泊まるところが無いので、大半が車で寝るか、あるいは日帰りで帰ってしまっていました。そうではなく、釣り人が集まって、いろいろと情報交換したり、釣果を語り合ったり出来る、そんな場所を作りたいと思って民宿をオープンしました。」

また釣り人だけでなく、子どもたちにもぜひ泊まってもらいたいという。

「本当に周りは自然の遊び場で、釣りも昆虫採集もやりたい放題楽しめますので、例えば夏休みに目一杯遊びながら、自由研究も出来てしまう、そんなことが出来る環境です。ぜひ都会の子どもたちに、ここで田舎体験してもらいたいですね。」

山、川、田んぼ - 地元の人にとっては当たり前の風景かもしれないが、都会の人にとっては、お金を出してでも体験したい。そんな需要を上手くとらえたと言えよう。

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「とんぼ屋」からほど近い安部駅。この延々とまっすぐに伸びるレールと周囲の風景に山田洋次監督が魅了され、「男はつらいよ 寅次郎の告白」のロケ地にもなった。

 

また2015年に鳥取県に移住してきた野々上真由さんは、八東駅舎でカフェを開いた。野々上さんは岡山県で移動調理の仕事に従事していたが、食材に関心を覚えるようになり、農業を始めたいという想いで、八頭町周辺で家を探していた。

そんなとき八東駅の駅舎に入居していた電機部品工場が退去することになり、引き渡しの現場にたまたま遭遇。そのレトロな雰囲気に一目ぼれし、ほぼ即決でその物件を借りることにし、「駅中喫茶ひとやすみ」を2015年7月に開業した。

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「もともとカフェをやろうと考えていたわけではないですが、調理の経験があったので、ここでカフェを開いたら、雰囲気の良いお店が出来るのではと直感しました。近隣住民の方が足繁く通ってくれたり、旅行者がふらっと立ち寄っては世間話をしていったりなど、交流の場にもなっています」

列車に乗降するためだけの駅舎に新たな要素を加えることで、交流の場へと変わった。

 

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このように若者が次々と新しいことを始めている八頭町だが、この町の魅力について、八頭町で移住・定住を担当している地方創生室 野田大和さんに聞いた。

「いろいろと町の特長はあると思いますが、最大の特長は、ほど良い距離感だと思います。八頭町は鳥取県東部のおへそにあたり、山に囲まれた地域でありながら、鳥取市街地へは車で15分ほどで出られますし、30分走らせれば海に出ることも可能です。また鳥取空港までも30分なので、東京などの大都市圏へのアクセスも実は便利です。したがって普段は田舎で暮らしながら、必要な時だけ海、山、都会に行く。それがしやすいのが八頭町ですね。」

確かに今回取材させていただいた人たちも、八頭町を拠点にしながら、必要に応じて、好きな時に好きなところに出やすいことを、皆異口同音に語っていた。

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八頭町 地方創生室 小谷卓也さん(左)、野田大和さん。

「今までは若い人が何か新しいことを始めるなんて、ほとんど考えられませんでしたが、この数年さまざまな動きが出始めていて、町の雰囲気が大きく変わりました。」(野田さん)

次々に新しいことが生まれ始めている八頭町だが、とは言え、まだ序章に過ぎない。しかし田舎でスモールビジネスを始めたい、そんな若者が八頭町で出始めているのは確かだ。そして彼らが呼び水になって、開業する若者が増えていくことで、今まで想定していなかった新しい動きも出てくることだろう。

いきなり都会でビッグビジネスとなるとハードルが高いが、まずは田舎で小規模から始めて、少しずつ事業を成長させていく。最近はそんな考えのもと、地方で開業する若者も増えていると聞く。

そう遠くない将来に「田舎で開業するならば八頭町」と言われる日が来るかもしれない。そんな予感がした。

 

鳥取県八頭町 地方創生室 http://www.town.yazu.tottori.jp/1227.htm

 

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山村俊太さん(奈良県出身)

2016年4月、田んぼのど真ん中にバイク乗りのためのゲストハウス「BASE8823(はやぶさ)」がオープン。そして「BASE8823」オープンをきっかけに、八頭町に移住してきたのが山村俊太さんでした。そんな山村さんに、移住のきっかけから現在の暮らし、将来の夢に至るまで、思いのたけを語ってもらいました。

 

八頭町に移住してくるまでは、どんな生活を送っていたのですか?

奈良県で生まれ育ち、専門学校を卒業後はJR東海に入社して、新幹線の車掌として、主に新大阪駅で勤務していました。

 

新幹線の車掌をしていたのですか!?それがまたなぜ、八頭町に移住しようと思ったのですか?

今から10年ほど前にバイクのハヤブサに乗り始めたのですが、「ハヤブサという名前の駅ってあるのかな?」と何気なく発券機で調べたら、八頭町に隼駅があったんですね(笑)。そこで早速休みの日に足を運んだのが、八頭町との出会いでした。

 

10年ほど前だと、まだライダーの聖地として隼駅が知られる前のことですね。

そうですね、その1、2年後に初めてイベントが開催されました。なので最初に来たときは、駅舎前で写真を撮っていたら、地元の人が「何で写真を撮っているんだ?」と不思議そうな顔をされましたね(笑)。

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隼駅を目当てにたまに来るのは分かる気がしますが、住むとなると、また話は別だと思いますが。

何度も来たり、また田舎体験民宿に泊まったりしながら、地元の人と交流しているうちに、人柄の良さに惹かれて、ここに住んだら楽しいだろうなと考えるようになりました。

またJRのような大企業はそうそうつぶれることはありませんが、地方はどんどん過疎化が進んでいます。

そうしたなかで、八頭町はハヤブサの聖地として、町外から人が訪れるようになっている一方で、泊まるところが無いために、みんな隼駅だけ見て、そのまま帰ってしまっていました。そこで泊まるところが出来れば、隼駅だけではなく、他にもいろいろと魅力的なスポットを紹介できますし、また地域にもお金が落ちるようになるのではないかと考えました。

そんな時に、地元の同級生同士で地域おこしに取り組んでいるトリクミが「BASE8823」をオープンする話を聞き、「一緒にやりたい!」とこちらへ移ることにしました。

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とは言え、JRを辞めてまで移住してくるのはすごいですね!

企業に勤めていると、ある程度将来が見えてしまいますが、そんな人生はつまらないなと。そうではなく、一歩一歩人生を切り拓いていく、そんな人生の方が面白いと思っていたので、もちろん迷いはしましたが、最終的にはどちらがワクワクするか、それが判断基準になりました。

 

地元の方の反応はいかがですか?

「若い人が頑張ってくれてうれしい」と好意的な声を頂いたり、ご近所さんからはよくおすそ分けや差し入れを頂いたりしています。また急に雨が降って来た時に、洗濯物を入れておいてくださったこともありました。都会では絶対に考えられないですよね。

あと「BASE8823」自体、八頭町界隈のツーリングスポットの魅力を伝えることはもちろん、住民の魅力を発信することも重要な役割ですので、住民とライダーが一緒に飲んだり、バーベキューしたりすることもあります。

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では最後に今後の抱負を聞かせてください。

よそから来て、いきなり八頭町全体とか、観光全般とか、全方位では出来ないので、まずはライダーに対して隼駅を核にしながら、この町の魅力を伝えられればと思っています。そのうえで、少しずつフィールドを広げながら、町の活性化につながるようなことが出来たら最高ですね。

この町には生活の原点があると思います。都会に比べたら確かに不便なことも多いですが、便利になるにつれて失われてしまった、暮らしの知恵とか助け合いとか、そんな人として大切なことが残っています。不便さが逆に心地良いくらいです。

そんな素敵な町をもっともっと元気に出来るように頑張ります!

 

有難うございました。

 

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八頭町は、鳥取県の東南部に位置し、東は若桜町、西は鳥取市にそれぞれ接している。

扇ノ山など1,000メートルを超える山々に囲まれており、町の中心を流れる八東川の流域では稲作を中心に梨、柿、りんごなどの果樹栽培が盛んに行われている。

また麒麟獅子舞など、伝統文化や歴史ある寺院も数多く残る。

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<アクセス>

車:鳥取市内まで約15分、大阪まで中国自動車道・鳥取自動車道経由で約3時間

JR:鳥取駅まで約15分(郡家駅から・普通列車)、大阪駅まで約2時間20分(同・特急)

 

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鳥取県八頭町

  • 山がある
  • アウトドアスポーツが楽しめる
  • 医療・福祉施設がある
  • 育児支援がある
  • 住宅支援がある
  • 起業支援がある
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